社内恋愛のススメ



暖簾をくぐった先にあるのは、くすんだ茶色の木に囲まれた世界。



店の壁一面を覆う、落ち着いた色合いの木の板。

テーブルもカウンターも、全てが木で作られている。


自然の中にいる様な感覚で、お酒を楽しんでもらいたい。

そんなこだわりの元で、全てが作られているのだ。


所々に置かれた、可愛らしい小さなキャンドル。

キャンドルの温かな光が、ふんわりと木の壁を照らしている。



メニューも、和食がメイン。

ちょっと渋いおつまみや、年配の人好みのお酒も取り扱っている。


どこか懐かしさを感じさせてくれるこの店が、うちの部長はえらく気に入っている。

ここが、企画部のお決まりの飲み会の場所なのだ。





「いらっしゃいませ!」

黒い制服を着た店員が、店に入ったばかりの私に声をかける。



「あ、えーっと、予約していた有沢なんですが………。」


遠くから私を呼ぶ声が、私の言葉は遮られてしまった。



「おーーーい、有沢、こっち!」


大きな声で私を呼ぶのは、長友くん。

両手を振って、私を呼んでいる。


あぁ、目立つ。

とてつもなく、目立つ男だ。

恥ずかしいじゃないか。


長友くんと私に、店内の視線が集まっているのが分かった。



(バ、バカ………長友くんのバカ!)


そう広くない店内で響く、長友くんの明るい声。


仕事上がりで、どうしてそこまで元気が残っているんだろう。

どうして、そこまでテンションが高いんだろう。


理解出来ない。

たまに、長友くんが理解出来ない。


私は店内の視線に耐えかねて、そそくさと長友くんが待つ席へと向かった。



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