社内恋愛のススメ



どこまで知ってるの?

長友くんは、部長からどこまで聞いているの?


声にならない問いかけが舞う。


それを無言で読み取って、答えてくれる長友くん。

長友くんの沈んだ声音が、空気を微かに震わせた。



「ファックスの内容なら、みんな………知ってる。」


予想通りの答え。


その答えに、肩が重くなる。

まるで、重石でも乗せられてしまったみたいに。



分かっていた。


私が最初に受け取った、文香さんからのファックス。

あのファックスを握り潰したところで、意味なんてなかったのだ。



私の名前まで、人事部には把握されていた。


あのファックスの後に送られた、何か。

私の名前まで載せた何かが、送られていたのだ。



やはり、とでも言うべきか。


文香さんは抜かりなく、最後までやり遂げたのだ。


私を陥れる作戦を。

私と上条さんを引き離す作戦を。



みんなに知られている。

ずっと同じ部署で仕事をしてきた人にまで、全てを知られている。


いい気分になんて、到底なれそうもない。



「そっか、そう………だよね。」

「ああ………。」


体も心も、重い。

重くて、重くて、重力になんて逆らえない。


どんどん沈んでいって、浮き上がれない。



手を伸ばしても、届かない。

明るい未来には届かない。


虚しく沈んでいくだけ。



「お前が転属になるのも、部長から聞かされたよ。」


長友くんが小さな声で、そう呟いて。


その言葉に、私の体がビクンと跳ねた。



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