社内恋愛のススメ



(部長のバカ………。)


どうして、そこまで言っちゃうの?

どうして、よりによって、長友くんに言っちゃうの?


長友くんには、長友くんにだけは、自分から言いたかった。

出来ることなら、自分の口で伝えたかった。



転属になること。

その理由を。


誤解されても仕方のない、あの日の出来事。



取り戻せない時間。

過ち。


そして、これから先のこと。



(………、ついに来たんだ。)


この時が。


部長のお陰で、ほんの少しだけ早く訪れてしまったその時。

それが、今なんだ。



私が、全てを伝える時。

長友くんに、全てを打ち明ける時が。


別れを告げるべき時が、やって来てしまったのだ。



涙が込み上げる。

熱い温度をともなって込み上げる涙を、唇を噛み締めることでようやく逃がす。


泣くな。

泣くんじゃない。



泣いていいのは、私じゃない。

私なんかじゃないのだ。


ゴクンと、息を飲み込む。



ここまで逃げてしまったのは、ひとえに私が弱かったから。

迷ってしまっていたから。


でも、もう迷わない。



意気地なしの自分なんて、大嫌いだから。


ようやく、振り返れる勇気が持てた。

長友くんの顔を見る勇気が持てた。


たった今、ようやく。




「ファックスのこと、知ってるんでしょ?そこに書いてあることも、全部。」


久しぶりに見る、長友くんの顔。

戸惑った顔。


ようやく、見ることが出来た。

愛しい人の顔を、この目に映すことが叶った。



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