社内恋愛のススメ
「知ってる、けど………。」
「私が転属になる理由は、不倫なんだよ。………相手が誰か、分かる?」
不倫という部分を、わざとらしく強調して言う。
嫌いになって。
私のことなんか、嫌いになってよ。
忘れてしまいたいくらい、大嫌いになって。
たくさん罵って。
そうする権利が、長友くんにはあるのだから。
「嘘だろ?あんなの、嘘だ………。」
信じていなかったんだね。
長友くんはあのファックスの内容を知らされていながら、信じてなんかいなかった。
長友くんは、バカだ。
本物のバカだよ。
私、長友くんのこと、裏切ってたのに。
本意ではなくても、裏切っていたのに。
それなのに、私のことを信じていてくれた。
部長も人事部も私を疑って、あのファックスを信用してた。
だけど、長友くんだけは、私のことを信じてくれていたんだね。
私の言葉を否定する長友くんに、私は大きく首を横に振る。
ありがとう。
こんな私のことを信じてくれて、ありがとう。
だけど、信じてくれなくていい。
私のことなんか、信じないで。
私、長友くんが思っているよりも、ずっとずるい女だよ。
浅ましい人間なんだよ。
信用してもらえる価値なんて、私にはない。
そんな価値はない。
私の言葉は、事実を並べただけのもの。
それが、私の意思とは関係なく行われたことだったとしても。
私と上条さんが、長友くんと文香さんを裏切った事実は変わらない。
変えられない。
この先ずっと、一生変わらないのだから。
「上条さんだよ。」
「………っ、………。」
「相手は、上条さん。奥さんにも会社にもバレちゃったから、支社に飛ばされちゃうんだよ………私。」