社内恋愛のススメ
私と長友くんの近くには、同期入社で入った社員がひしめき合う。
みんな、分かってるんだ。
この企画部に長く勤めている人間ならば、この会がどうなるかが予想出来てしまうのだ。
どうやら、部長から逃れたくて、こんな端っこの席に陣取っているらしい。
まぁ、逃げたくもなるか………。
(でも、ちょっとだけ………上条さんの隣に座りたかったなぁ。)
そんな未練が、私の中に残る。
どうにかしたい訳じゃない。
そうじゃないけれど、少しくらいは上条さんと話がしてみたかったのだ。
こんな時でもないと、これから先も話す機会なんてない。
同じ部署で、同じフロアで働く2人。
だけど、昔とは違う。
上条さんは、もう私の教育係じゃない。
いつも気にかけてくれて、面倒を見てくれる訳じゃない。
同じ部署の中の、その他大勢の中の1人だ。
席だって、遠い。
接点だって、全くない。
だから、楽しみにしていたのに。
今日の飲み会を、密かに楽しみにしていたのに。
メイクも、ばっちり直してきた。
だけど、直した意味がなくなってしまっている。
部長から遠いのは有り難いけど、上条さんからも離れているのは残念。
いや、残念どころの話じゃない。
残念を通り越して、悲しくて泣けてくる。
「な、何で………飲み会でまで、長友くんの隣なの!?」
隣に座る長友くんに、ちょっとだけ八つ当たり。
27歳にもなって、大人げない。
そうは思いつつも、止められない。