社内恋愛のススメ



こんなこと、長友くんに言っても仕方ないって分かってるのにね。

長友くんに当たったって、何も変わらないのに。


ごめん。

ごめんね、長友くん。



「はぁ?感謝しろよ、有沢!」


部長の近くでなんて、飲みたくないだろう。

そう言いたげに、長友くんが部長の座る方向へと顎を向ける。


憤慨した様子で、そんなことを言う長友くん。



こうして、上条さんの歓迎会は、1番遠い席で迎える羽目になってしまったんだ。






「では、上条くんの主任への昇格を祝って乾杯!」

「カンパーイ!!」

「主任昇格、おめでとうございまーす!」


あちらこちらで、グラスをぶつけ合う音が聞こえる。


いよいよ、歓迎会の始まりだ。



1番遠い席ってのは残念だけど、もうどうしようもない。

決まったことに文句を言っても、どう変わるものでもない。


後悔するのは、最初だけでいい。


ずっと後悔し続けて、落ち込むよりも、この時間をめいっぱい楽しむ方がいい。

その方が、ずっと有意義だ。



だって、今日はテンションが上がる様な事実がたくさんある。


花の金曜日で、明日は仕事が休みで。

どんなに飲んだくれても、誰にも迷惑をかけることはない。


こんな日は、飲まなくちゃ。

会社の飲み会だけど、楽しまなくちゃ。


そう思うから。




「はぁーい、お疲れーーー!」

「乾杯!!!」


私達も私達で、それぞれグラスをぶつける。



私のグラスに注がれているのは、もちろんビール。

他の面々も、大体の人はまずビールを飲もうとしている様だ。


日本人って、不思議な人種。

周りに合わせて、生きようとする。

周りに合わせて、その場を楽しもうとする。


最初にビールを頼む人が多いのは、そのせいかな?



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