社内恋愛のススメ
『社内恋愛のススメ』



後悔なんてしていない。


自分が選んだ道も、その道を歩いてきたことも。

全ては、自分で選んだことなのだから。



上条さんと付き合っていたこと。

上条さんとの別れを決めたこと。


あの時はそうするべきだと思っていたし、その選択は今でも間違っていなかったのだと胸を張れる。



上条さんと過ごした日々は、短かったけれどとても幸せだった。


キラキラ光る星みたいに、ささやかな幸せだったけれど。

未来はなかったんだ。


その先へと続く未来は、私達には存在していなかった。

文香さんが現れた時点で、私と上条さんの運命は交わることないのだと定められていたのかもしれない。




長友くんのことだって、そう。

長友くんへの気持ちも、嘘はなかった。


長友くんは上条さんの存在を気にしていたけれど、私はちゃんと長友くんのことが好きだったよ。

真剣だったんだ。



最初は恋が破れたことに傷付いて、寂しかっただけなのかもしれない。

寂しさを埋める為に、長友くんの存在を利用していたのかもしれない。


でも、決して軽い気持ちで、長友くんのことを考えていた訳じゃないよ。



長友くんのこと、本気で好きだった。

穴を埋める為でもなく、寂しさを誤魔化す為でもなく、本気で長友くんのことを見ていた。


あえて言うなら、1つだけ後悔していることがある。



唯一の後悔。

それは、長友くんのプロポーズの返事が出来なかったこと。


ごめんね。

ごめんね、長友くん。



私には、プロポーズを受ける資格なんてないんだ。

汚れてしまった私には、長友くんと一緒にいることさえ出来ない。


一生懸命、恋をしたこと。

一生懸命、仕事をしたこと。


全てが、私の宝物。



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