社内恋愛のススメ



キスをするのも、長友くんがいい。

手を繋ぐのも、長友くんがいい。


好きだと言うのも、体を重ねるのも、全部長友くんじゃなきゃダメなんだ。


全て、長友くんとしたいんだ。



「俺だって、有沢以外とそういうこと、したくない。」


同じなんだ。

長友くんも、私と同じ気持ちでいてくれたんだ。


こんなに変わってしまったのに、私のことをまだそんな風に感じていてくれた。



「ごめんな………。」


長友くんが呟く、謝罪の言葉。

沈んだ声が、鼓膜を震わせる。



「守ってやれなくて、ごめん。お前の彼氏は、俺なのに………。」

「長友くん………。」


長友くんは、何も悪くないよ。

長友くんがあやまる必要なんて、どこにもないんだよ。



あの日、長友くんに待っていてと言ったのは、私だ。


長友くんは律儀に、私の言葉を守っていてくれた。

私の言葉の通りに待っていてくれて、私との約束を守ってくれた。


長友くんとの約束を破ってしまったのは、私なんだから。



謝らないで。


長友くんは悪くない。



「実和………、好きだ。」


長友くんの声までもが、濡れていく。

泣いているのは私の方なのに、長友くんまで涙声になっていく。


こんな長友くんを見るのは、初めてだ。



長友くんが、私の名前を呼ぶ。

愛おしそうに、私を見つめて呼んでいる。


滅多に口にしてくれない、実和という呼び方で。



実和。

自分の名前が、特別に思える。


どうということはない自分の名前が、長友くんが呼んでくれるだけで特別な名前みたいに思えてしまう。



苦い思い出がもたらす、痛みと。

長友くんが与えてくれる、ときめきと。


入り交じる感情が、余計に涙を誘う。



「わ、わ、私だって………、長友くんのこと、好き………だもん。」


言葉を重ねる。

唇を重ねる。



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