社内恋愛のススメ
『隣のアイツ』



あの後、長友くんが教えてくれた。

私を見つけ出した、その方法を。



「お前の名前でこの支社から送られてきたメールを、俺が会社のパソコンで見つけたんだよ。」


「私が送った、メール………?」


そういえば、送った様な気もする。



仕事上、社内での連絡をメールで回すことも多い。

営業部だから、新しく獲得した仕事について、本社に自分でメールを送ることもある。


たくさん送ったメール。

その中の1つを、長友くんが見つけたのだろう。



長友くんの腕の中で聞く、空白の時間。


この1年と2ヶ月、長友くんがどんなことを考えていたのか。

ここに来る為に、長友くんがどれほど苦労を重ねてきたのか。


長友くんの想いを、長友くんの腕の中で聞く。



「ひどいんだぜ。」

「ひどいって、何が?」

「部長もあの男も、誰もお前の転属先を教えねーし。あの男はともかく、部長は絶対知ってるはずなのに………。」


若干キレ気味に、そう話す長友くん。

そんな長友くんに、私は思わずプッと吹き出す。


ダメだ。

やばい。


長友くんらし過ぎて、笑える。



長友くんは、やっぱり長友くんだ。


真面目なだけじゃなくて、ちょっと子供っぽくて。

大人なはずなのに、どこか少年の様で。


変わらない長友くんに安堵したのも、確か。



「ぷっ………、くくく………っ、あはは!」

「笑うな、バーカ!」


バカって、言うな。

仮にも、こんな遠く離れた場所まで追いかけてきた彼女に向かって、バカとか言わないで。


口の悪さも、相変わらず。



ああ、慣れって恐ろしい。

口の悪さなんか、気にもならない。


それどころか、それすらも可愛らしいなんて思えちゃうんだから。



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