社内恋愛のススメ



長友くんが仕事が出来る人間なのは、本当のこと。

同期の中で1番期待されてる社員であるのも、事実だ。


長友くんの言葉の通りなのだけど、悔しいから認めてやらない。

そうだね、なんて言ってあげない。



子供っぽくて、憎らしくて。

笑顔が可愛いこの男が、今の私が愛している人。









「初めまして。今日からこちらの営業部でお世話になる、長友 千尋です!」


嘘だ。

嘘でしょ。


再会は長友くんの手によって仕組まれたものだったけれど、これは違う。



運命。

そんなものがあるのなら、正にこれがその運命なのかもしれない。


ああ、ロビーでのやり取り、再来。



「本社では、企画部に所属していました。営業は初めてですが、精一杯頑張りたいと思います!」


長友くんが、営業部の社員の前で頭を下げている。


長友くんが配属されたのは、営業部。

そう、私が今配属されている、営業部。


それほど大きくもないこの支社の中で、1・2を争う忙しさを誇る部署だ。



(本社の企画部からだから、絶対他の部署に回されると思ってたのに………!)


どうして、また同じ部署に配属されたのだろうか。


運命なのか。

腐れ縁なのか。



まぁ、どっちでもいいか。


だって、嬉しいんだもん。



また、長友くんと同じ場所で働ける。

また、長友くんと一緒に仕事が出来る。


もうそんなことはないと、そう思ってた。

長友くんと一緒に働くことはないのだと、諦めていた。



一緒にいられる。

一緒に働ける。


それだけで、天にも昇ってしまいそうだ。



「よろしくお願いします!」

「こちらこそ、よろしく!!」


元が、人懐っこい長友くんだ。

既に、周りの社員とも打ち解け始めている。


自分から手を差し出して、握手を求めて。

差し出された手にも、笑顔で応える。


営業部に馴染むのも、時間の問題なのかもしれない。




「じゃあ、長友くん。君のデスクは空いている席になってしまうんだが、それでもいいかな?」


営業部の部長がそう言って、私の座る方向を指差す。

私の座る方向というよりも、私の隣を指し示している。



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