社内恋愛のススメ



「う、うーん、眠い………。」


目を擦りながら、テレビの画面をぼんやりと見つめる。


眠いせいなのか。

視力が落ちたせいなのか。


テレビの画面は朧げで、靄がかかった様に映る。



眠い。

ほとんど寝ていないせいで、上手く頭が回らない。


回転しない頭を抱えて、ふと視界の端に映り込んだ時計を見る。



「そうだ、準備!」


時計を見れば、既に午前9時。

準備を始めるには、少しばかり遅い時間。


いつもの手抜きメイクなら、余裕だけど。



今日は、手抜きなんか出来ない。

人一倍、気合いを入れなければならない日。


だって、今日はデート。

上条さんとの初めてのデートの日なんだから。



そもそも、デート自体がご無沙汰なんだけれども。

デートなんかしたのは、思い出せないくらいに昔のこと。


気合いが入るのも、無理はない。



「んー、やっぱ苦手。」


独り言を言いながら、塗るマスカラ。

真っ黒なマスカラが、私の長くない睫毛をボリュームたっぷりに変身させていく。


時間がないから、ちょっとの手のブレも命取り。

震える手に細心の注意を払い、目元を仕上げる。



服の色に合わせて選んだのは、爽やかなブルー。

淡いブルーのアイシャドウを瞼の全体に乗せ、目の際を濃いブルーで彩って。


既に着替えた服は、真っ白なワンピース。

コットン地のワンピースの上に、デニムのジャケットを羽織っている私。


その服装は、通勤する時よりもずっとラフなもの。



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