社内恋愛のススメ



「おはよう、有沢さん。」

「お、おはようございます、上条主任!」

「せっかくの休みなのに、すまない………。」


他人行儀なその言葉は、会社にいる時の上条さんそのもの。

まぁ、そんな所も上条さんらしいけれど。



「大丈夫ですよ。気にしないで下さい。」


笑顔で、そう答える。


上条さんが謝る必要なんて、どこにある?

上条さんが謝る必要なんてないのだ。


私は誰よりも、今日という日を待っていた。

楽しみに待っていたのだから。



遠足に行く前の子供の様に、昨日は眠れなかった。

寝不足で迎えてしまった今日は、酷い有り様のはず。


目元にある、隠し切れないクマ。


化粧品って、素晴らしい。

隠し切れないクマを、何とか見れる状態まで仕上げてくれるのだから。



ワクワクした気分は、もちろん今日も継続中。

昨日の夜から、ずっと上がりっぱなしのテンション。


表情も、自然と綻ぶ。



「さぁ、乗って。」


私を促す、上条さん。

慣れた様子で、私をエスコートしてくれる。


軽く肩に触れた手。


大きなその手が導いてくれる、助手席までの道。



何だか、夢みたい。

夢の続きを見ているみたい。


私、待ってた。


4年前から、こんな日が訪れるのをずっと待っていた。



触れられた肩が熱い。

頬が熱い。

全身から熱が出て、発火してしまいそう。


熱過ぎて、おかしくなる。



上条さんの車の中はきちんと掃除されていて、いかにも上条さんの車という感じだった。


綺麗好きな上条さん。

そう言えば、会社のデスクの上もビシッと整理されている。


長友くんとは対照的なそのデスクを指差して、よく長友くんに説教をしていたから覚えている。



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