社内恋愛のススメ



(ふふふっ、上条さんらしい。)


こうして、私と上条さんのデートは始まった。






ブォーーー………


エンジンから聞こえる排気音。


初めて乗る車だからなのだろうか。

全てに慣れなくて、どうしても緊張してしまう。




こんな風に誰かの車に乗るのは、久しぶりだから。


社会人になってから、彼氏がいた記憶がない。

恋愛らしい恋愛もせず、ただひたすら一方通行の想いを抱いていた私。



誰かと一緒に車に乗ることが、久しぶりで。

こんな狭い空間に男の人といることが、久しぶり過ぎて。


異常に緊張する。

緊張が度を超えて、手に汗が噴き出してくる。


固まっている私をよそに、上条さんは涼しげな顔。



「上条主任、これからどこに行くんですか………?」


私がそう聞けば、上条さんは澄まして応える。



「秘密。………いい場所だから。」


そう言ったきり、また前を見てしまう上条さん。


彼の横顔をチラチラ盗み見ること、2時間。

上条さんが車を走らせ始めてから、しばらく経った頃に気が付いたこと。



周りの景色が変わっている。

都会的な街並みが、いつの間にか消えている。


その代わりに、私の前には雄大な風景が広がっていた。



「わぁ!」


思わず漏れる、感嘆の声。




目の前に広がっているのは、海。


どこまでも青くて、深い色。

水平線は丸くて、私が住むこの星が丸井んだって改めて実感させてくれる。



オフィス街で働く私が、滅多に見ることが出来ない景色。


水平線の間際で、空の青と海の青が混ざり合う。

それが何とも言えず、美しい。


海沿いに真っ直ぐ伸びる道を、上条さんの車が走っていく。



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