社内恋愛のススメ



いつもの様に流れる日常。

毎日、同じことの繰り返し。


毎朝、決まった時間に電車に乗って、会社へ行く。



面倒だけど、時間をかけてメイクをして。

これは、最近やっと習慣になってきたことだけれど。


企画部があるフロアに辿り着けば、いつもの面々が声をかけてくれる。


隣のデスクには、長友くん。



「おーっす!おはよー、有沢。」


笑顔でそう言って、私のことを出迎えてくれる。


違うのは、彼。

変わってしまったのは、主任である上条さんとの関係だけ。






「おはよう、有沢さん。」


以前と同じ様に、私をそう呼ぶ上条さん。


もう、実和とは呼んでくれない。

あの甘い声で、私の名前を呼んではくれない。



あの夜が、幻みたいに思える。

それくらい、上条さんは変わらない。


変わってしまったのは、私の内面。



熱っぽい声も。

愛を囁く言葉も。


全ては、あの夜の闇に消えてしまったのかもしれない。



ちょっとだけ、寂しい。


彼女なのに。

付き合おうとはハッキリ言われていないけれど、彼女という存在に近いものにはなったはずなのに。


そう思っていたのだけれどーー……



「有沢さん、出勤早々で悪いんだが、この書類をコピーしてきてくれ。」


上条さんがそう言って、書類の束を手渡す。


抑揚のない声。

何の感情も読み取れない。


だけど、気が付いた。



「あ………。」


書類の束の中に埋もれた、1枚の付箋。

淡いブルーの付箋紙。


その付箋紙に書かれていた、丁寧な右上がりの文字。



< 71 / 464 >

この作品をシェア

pagetop