社内恋愛のススメ
ズキン。
胸が痛い。
痛いよ。
ズキン、ズキン。
あぁ、胸って、こんなに痛むものだった?
激しく痛む心臓が、全身までも強く締め付けていく。
痛い。
痛いよ。
痛くて堪らない。
1番痛いのは、心。
あの人に裏切られたことを嘆く、この心だ。
幸せって、長くは続かないんだ。
永遠なんて、そんなもの………この世にはないんだ。
少なくとも、私達の間には存在していなかった。
そういうことだ。
私が恐れていたのは、きっとこんな裏切り。
あの人を失うこと。
あの人を手放す日がくること。
グニャリと歪む視界。
色彩がごちゃ混ぜになって、マーブル模様になっていくのが分かる。
失われていく、平衡感覚。
体がフラフラと揺れて、自分で自分の体が支えられなくなって。
私は、静かに意識を手放した。
目を覚ました時、真っ先に見えたのは白い天井。
騒がしい社員食堂とは、全く違う景色の中にいる自分。
覚醒していく意識。
だけど、さっきの記憶は消えてはくれなかった。
「企画部の上条主任、知ってる?」
「当たり前じゃん!あの格好いい主任、社内なら知らない人はいないんじゃない!?」
そう。
誰にでも自慢出来てしまう、素晴らしい人。
尊敬出来る人。
それが、私の恋人。
「その上条主任、結婚するんだって!」
「ええ!?嘘でしょ?」