社内恋愛のススメ
「………や、だ………っよ………」
そんなの、嫌だよ。
認めたくない。
受け入れたくない。
嘘だよ。
誰か、そう言って。
「………う、ああぁ………、ひっ………」
漏れる嗚咽は、無様なもの。
白い空間に、私の漏らす嗚咽が虚しく響く。
ここがどこなのかなんて、今の私にはどうだっていい。
悲しくて。
つらくて。
切なくて。
負の感情だけが、私の中で嵐となって吹き荒れる。
誰かに見られたって、構わない。
そんなこと、どうだっていい。
どんなに頑張ったとしても、この涙は止まらない。
私はそのことを、誰よりも分かっていた。
上条さん。
上条さん。
やっと、あの人に手が届いたのに。
その手に、自分の手を重ね合わせることが出来たのに。
幸せが逃げていく。
手のひらから零れ落ちる砂みたいに、私の手から逃げていく。
零れ落ちた砂は、どこに行くのだろう。
どこに向かうのだろう。
ガチャン。
静けさに満ちていた白い空間を打ち破る、大きな音。
金属音が響いてすぐ、私の視界は遮られた。
目の前にかかる、白いカーテン。
そのカーテンを引きちぎりそうな勢いで開けた人。
真っ白なカーテンとは対照的な肌。
ナチュラルブラウンの短い髪。
それは、あの長友くんだった。