社内恋愛のススメ
上条さん。
何が、本当なのだろう。
何が、真実なのだろう。
私は、何を信じればいいのだろうか。
(教えて下さい、上条さん………。)
「ここは医務室。社員食堂で倒れたって聞いて、俺、慌てて来たんだよ。」
心配そうに、眉尻を下げる長友くん。
長友くんの言葉を聞いて、グルリと周りを見回してみる。
白を基調とした、内装。
壁と似た色の、オフホワイトのカーテン。
真っ白な空間は、病院の中と似ている気がする。
飲み込まれてしまいそうなほどの白。
真っ白なだけの空間。
白で統一された空間は、毛羽立つ心を落ち着かせてくれる。
あぁ、この白に飲ま込まれてしまえばいいのに。
全て真っ白に染まってしまえばいいのに。
そうすれば、この悲しみも消えるはず。
もう何も考えたくない。
何も思い出したくない。
この白に飲み込まれてしまいたい。
「ここ、医務室だったんだね………。分かんなかったよ。」
私が分からなかったのも、当然と言えば当然。
だって、健康には人一倍気を遣ってきたから。
社会人たる者、健康でいるべきだ。
体調管理くらい、しっかりしなさい。
健康でなければ、満足いく仕事なんて出来ない。
他の社員に、迷惑をかけるだけだ。
入社したばかりの頃、そう教わったのだ。
他の誰でもない、上条さんに。
私はその教えを、今まで忠実に守ってきた。
普段から気を付けているお陰で、病気で欠勤したことは入社してから1度もない。
もちろん、医務室のお世話になったこともない。
そんな私を知っている長友くんだからこそ、私が倒れたと聞いて驚いたのだろう。