社内恋愛のススメ
ざわめくフロア。
同じ部署の誰もが、色めき立つ。
いつだってクールで、冷静で。
取り乱した所なんか見たことない。
それは会社でも、プライベートでも同じ。
物事を瞬時に判断出来て、的確な行動を取る男性。
大人の男。
それが、上条さん。
それなのに、一体どうしてしまったのだろう。
(何かあった………?もしかして、トラブル?)
上条さんに限って、仕事でミスを犯すことはないと思う。
仕事上でトラブルに巻き込まれることも、少ないと思う。
でも、可能性は0じゃない。
絶対有り得ないこととは言えない。
ドキン。
ドキン、ドキン。
先ほど以上に、鼓動が速くなる。
心臓が真っ赤な血を、フルスピードで送り出し始める。
「………迷惑だ。」
そう言って、受話器を置いた上条さん。
切れた通話。
上条さんが発した、迷惑という2文字の言葉。
(どうしよう………!)
どうしよう。
何かあったのだろうか。
何かがあった。
そうとしか思えない。
上条さんに何かがあったのなら、助けてあげたい。
私なんかに何かが出来るとは思えないけれど、力になってあげたい。
受話器を置いてからも、そわそわと落ち着かない様子の上条さん。
気になる。
気になる。
気にするなと言う方が無理だ。
部下としても、恋人としても気になる。
気になってしまう。
こんな時ならば、近寄っても不自然ではないだろうか?
周りから見ても、変に思われないだろうか?