彼女のすべてを知らないけれど
通報する気もなくなってしまった。
なにより、ミコトは好意的だから。
俺は、少しだけミコトの話を聞くことに した。
「分かったよ。とりあえず、座って。玄米茶、淹(い)れるから」
「おお! 気が利くではないか。久しぶりにたくさんしゃべって喉が渇いたところだ 」
ミコトは嬉々とした表情でダイニングテー ブルの席につく。
二人分のお茶を淹れると、俺もテーブルを挟んでミコトの正面に座り、尋ねた。
「然は、言ってた。このお守りは、年に一 回作るか作らないかーくらい、貴重な物だって。
ミコトも、それについて何か知ってるの? 」
「知っている。我が作った物だからな。効果は保証するぞ。
然の神社が繁栄することを願って、毎年協力しているのだ。我にできることといえば、それくらいだからな。
願いの叶うお守り。これを売れば、命守神社は永遠に安泰。今も、然の家族は商売繁盛しているだろう?」
「うん、参拝客の数がすごかったよ。俺の地元の神社は、初詣の時ですら人の出入りが少なかったのに」
「そういう神社には、神など存在しない。 だから廃れるのだ」
「ミコトのような神は唯一無二って言ってなかった? それだと、全国の神社一軒一軒に神を配属する余裕はないんじゃ ……」
「それは心配ない。我には部下がいる。我ほどではないが、ただの幽霊だった彼らはそれなりに訓練を積んだ上級者だ」