等身大の愛唄
結局、杏栖とはあのまま会えないまま。


放課後がやって来た。

一応、自販機の中の金は俺が持ってきたけどさ。


金を見つめながら溜息を吐く俺。



「なぁーに、真剣に溜息なんか吐いて。龍哉らしくないぞー?」



肩に寄っかかりながらケラケラと呑気に笑う、俺の親友…。

宮越 伊鶴(ミヤコシ イヅル)


本人はどう思ってるか知らないけど。

つーか…



「俺らしいって、どんなの?」



それすら、分かんねぇ…



「えーっとね、自信たっぷりで、馬鹿でアホでドジで間抜けで――」

「ちょっと待った。お前、俺の事侮辱してんだろ?」



俺はそこまで人間的に酷くない。



「バレた?」



そう言って、またケタケタ笑う伊鶴。



「まぁ、俺的に言うと…意地汚いって感じだよ?龍哉は。」



今度は真剣な顔したかと思ったら…

意地汚いかよ。



でも…まぁ…
コイツがこんだけ、真剣な顔してんだから。

これは伊鶴の本心だろうな。



「じゃ、俺も言わせてもらうけど。俺から見た伊鶴は、ただの馬鹿。」



これくらいは言ってもバチ当たんねぇよな。



「何ぉお!?!?!?」



ただし、



「そういう所は俺、憧れてるけど?」



いい意味でな。


そう言い残して、俺はギターを持っていつもの駅前へと向かった。



「俺も龍哉の事好きだよ――――――っっ!!!!」



と、言う馬鹿・伊鶴の叫びを背にして。

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