アウト オブ ザ ブルー
3月も終わりに近づき、マサが講師をする学校へ打ち合わせに出かけた日。
彼は「講師の身分でも普通の教諭と同じ待遇を受けられるみたいだ」と喜んで帰って来た。
「先生方は親切だったし、廊下ですれ違う生徒達も挨拶がしっかりしてて、結構よさそうな学校だったよ。1年生を担当することになったんだけど、受験校だから教えがいもありそうでさ…。あ、部活は野球部になったんだ。野球なんてするの、小学校以来だよ」
そう言って目を輝かせたマサは、すっかり元の彼に戻っていた。
「4月1日に辞令が出て、いよいよ俺の教員人生が始まるんだ」
「よかったね」
私がそう言うと、スーツ姿のマサは急に真面目な顔をして言った。
「それでさ…、ちょっと考えてたんだけど…」
「…何?」
「俺が社会人になるその4月1日に…、俺達、入籍しないか?」
「え…?」
「すぐに結婚式を挙げてやれなくて申し訳ないんだけど、それはいずれ俺が正式に採用されてからってことで…」
言葉が出なかった。
「ミッチ…?」
いよいよそのときが来るのだ。