始まりの予感


「なんで私があんたを押し倒さなきゃなんないのよ!」


ありえない、本当に。

こうなったのは、そもそもエイジのせいなのに。


「ちょ、触るな!」


私の腰に両手を添えて来たエイジを軽く睨み付ける。


古臭い絨毯貼りの床の上に転がるエイジの顔に妙に色気を感じて、思わず視線をそらした。



「んー、無理かも。このスチュエーションかなりソソる」


「はぁ?スチュエーションじゃなくて、シチュエーションだし!っていうか、こっちが無理なんですけど」


そう言い返すと、エイジの手が今度は私の手首をギュッと掴んだ。


そして、勢い良く引っ張られる。


「ちょ、ちょっと!なにすんのよ、変態!」


エイジの広くて厚い胸板にすっぽり包まれた私。


なぜか、エイジの両腕は私の背中をギュッと抱き締めている。


「ふざけないでよね!」


そう言いながらも、内心はドキドキが止まらない。


細くて華奢に見えるくせに、エイジの胸は想像していたよりも広くて。


「ふざけてねぇし、俺は本気だ」


「はぁ?」


耳元にかかる吐息。


いつもよりも近くで聞こえるエイジの声に、なぜかドキドキは大きくなっていくばかり。


ちょっと待って、どうしちゃったの私の心臓。

エイジにドキドキするなんて本当にありえないんですけど。


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