§スウィート・ルージュ§~甘い秘密を召し上がれ~(完)

「どうしたの?こんな時間に…?」


直との仕事は、すでに終了して
以前のように毎日会うことはなくなっていた


会えるのは、直のレッスンの日だけ


だから、

こうして来てくれたのが心から嬉しい…


「うん…

咲和の顔が見たくなって…


それに…

咲和の料理本、試作だけど出来上がったから見せようと思って

ここに、あとコンテストの時のを載せるだけなんだ」


私の前に立ち料理本を見せた


「そうなんだ…」


手渡された料理本を手に取り
パラパラとめくってみる

江川さんが言ってくれた
スカイブルーのイメージの表紙で
素敵に仕上がってる


「素敵なものに仕上げてくれてありがとう」

大事に胸に抱く

「それに
こうして会いに来てくれて、ありがとう…嬉しい…」


小さな声で、直に言う


「咲和? 元気…ない…?

もしかして…

星川さん…か…?」


コクリと頷き、ゆっくりと直を見上げた


「そうか…」


目の前の直の腰にギュッとしがみつく


「直…」


直は、私の髪をゆっくりゆっくり撫でた



そして…


私の両腕を持ち
私を立たせて
私が座っていた椅子に直が座り
向かい合うよう私を直の膝に座らせた


見つめ合い
どちらともなく唇が重なった


「ン…っ…」


重なった唇が熱を帯びて、全身を伝い身体の芯が疼いた


「直…」



今は、何もかも忘れて直との甘い時間を過ごしたい


直を感じたい


そんな気持ちだけでいっぱいだった…





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