恋のち、飴玉
そう言いながらも目の前にコトリと置かれるマグカップ。これで飲むか?なんて訊いてくるとは、なんと無粋な。
「…いただきます」
ほんのりと湯気を立てるそれを口に含めば、じわりと、ほどよく甘いチョコの風味がぱっと広がる。
相変らず、この人の淹れるホッとココアは絶品だ。
「今日は近所のガールフレンドとデートだとよ。ったく、つくづく猫のマイペースさを恨むな」
猫舌なためにずるずるとゆっくり飲んでいれば、訊いてもいないのに愚痴り出す。そうして「俺、あいつの中の優先順位だと何番目なんだろう」と落ち込みだす始末。
「その内帰ってくるでしょ」
呆れながらそう言えば、「俺は、メス猫になんか負けたんだ。こんな屈辱的なことがあってたまるか」と険しい顔で返された。
そんな彼を見て、もうこいつだめだな、と早々に見切りをつけて放置することに決める。