密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 私から結婚したいと言えばいいのかもしれないが、ねだるような結婚はしたくない。

 プライドなんていらないかな。

 でも、プロポーズは男性からしてほしい。それが唯一お星さまに願い続けてきた子供の頃からの夢だから。


 冬樹にとっての私の存在価値ってなんだろう……。

 週末に家にきて料理や洗濯、掃除をしてくれる無料家政婦?

 暇な時のドライブ相手?
 
 エッチしたい時にすぐできるお手軽女?

 もしかしてなにもなかったりして……。


 冬樹はレントゲン技師なのに、私の身体も心も透かし診てはくれない。


 私にとっての冬樹の存在価値ってなんだろう……。

 以前は一緒にいるだけで楽しくて『幸せ』という文字がはっきりと浮き上がっていたのに。時という砂に少しずつ埋もれ見えなくなってきた。まるで砂時計のように。


 六年も付き合っていると二人の関係すら疑問へと姿を変える。

 レントゲンには写る事のない厄介な病気のようだ。こじらせて困る前に治せるだろうか。


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