密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 危険かもしれないと思われる助手席に私は座った。

 車という狭い空間で二人きり。

「綺麗だよね」

「さっきまで見てた星?」

「いや、君のその長い黒髪」

 ルイと名乗るその男性の新緑のような香水の匂いと生まれた時から持ち合わせているクールな匂いが、私のあらゆるものを揺るがせ、車のエンジン音がそれに拍車をかけた。


 少しくらい危険な方がいい。その方が、私の慢性的な腰痛も治るかもしれない。


 そう思いながら、私は代わり映えのしない景色を助手席から眺めていた。

 この車が高速道路を下りた後に起こるであろう事を窓の向こうに熱く、蜃気楼のようにイメージしながら……。






【高速道路を助手席で*END】



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