遠距離恋愛
「…参ったなあ。俺に勝機は無さそうだ」
「てゆーか悪者?」と、ぎこちない笑顔を見せる。
「…拓未さんは、凄く優しくて、頼れる先輩です。
俳優として成功して欲しいって、頑張って欲しいって思います」
「…うん。ありがとう」
少しの間の後。
「…毎日頑張ってる茉柚ちゃんを見て、好きになったんだ。
こんな子が傍に居てくれたら、俺も頑張れるって思った。
でも、俺が好きになった茉柚ちゃんは彼氏在りきの姿、だったんだな」
「…はい、そうです」
「…あーあ!俺やっぱ女運ねーのかなー!」
拓未が仰け反るように身体を伸ばすと、
パイプ椅子がぎしりと鳴った。
「…ゆっくり考えるといいよ。
その間は俺も諦めないからな!」
笑顔で言われてしまっては、
曖昧に微笑んでみせるしかできなかった。