炭酸アンチヒーロー番外編
「──まお、」

「え? ヒロく……ッ、」

「ちょっ、辻?!」



──おまえは、俺のだろ。

そう実際に口にしたのか、はたまた頭の中で強く思っただけなのか、今となってはもうわからない。

ただ気づけば俺は、柳川の目の前だということも構わず、まおの腕を強く引いて──彼女の唇を、自分のそれで塞いでいた。



「……んっ」



息苦しそうに、まおが甘い声をもらす。

さらに腰を強く抱き寄せ、角度を変えようとすると……左頬に、衝撃が走った。



「ッ、ヒロくんの、馬鹿っ!」



彼女が俺の頬をぶったのだと理解する前に、まおはそう言い残し校舎へと走り去る。

呆然とその背中を見つめる俺の肩へ、柳川がポンと片手を乗せた。

その顔はムカつくことに、笑いを耐えているのがありありとうかがえる。



「辻、おまえ不器用だなぁ」

「……うっせぇよアホッ!」



事の発端でもある柳川に、しっかり捨てぜりふをお見舞いして。

俺は、彼女の消えた校舎に向かって走り出した。
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