炭酸アンチヒーロー番外編

てのひらくらべ

ふ、と目が覚める。そこは豆球のオレンジっぽい明かりだけが照らす、見慣れた自分の部屋。

少しだけだるさが残る身体をひねり、緩慢な動作で枕元の目覚まし時計を確認すると……デジタルな数字は、午前4時半というなんとも中途半端な時刻を示している。

俺は横たわったまま、音をたてないようとなりで未だ眠り続ける彼女の方を向いた。

どうせ成長期だからと、高校入学時に親が奮発して買ってくれたこのセミダブルのベッドは、大学生になった今でも──主に彼女とのこんなアレコレのとき──重宝している。



「(……髪、だいぶ伸びたな)」



何気なくとなりの彼女、まおの寝顔を眺めていると、目につくダークブラウンの髪の毛。

順調に伸ばし途中のその髪は、彼女いわく普段どうしても実年齢より幼く見られがちの外見を、少しでも大人っぽくしようとの試みらしい。

……確かに、白いシーツに散らばるつややかな髪というのは……本人にその気がなくとも、どこかひどく扇情的だ。


俺は若干ヨコシマなことを考えつつ、彼女の髪にそっと手を伸ばす。

さらさらと指の間からこぼれ落ちる細髪は、視覚的にも触覚的にも心地良い。
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