偽善愛で夢を見て。


「嫌い。」

「あ?」

凄んだって、諦めた私は怖くないよ。


「みんな、嫌い。

大嫌い。


あんな体験、したことないでしょ。
林間から帰ってきたら、家中血まみれで。


どれだけ苦しいか、判らないでしょ。
頼れと言われたって、赤の他人にドップリ填まることなんて出来ない。

高2だったし、一人で生きられる所を見せなきゃいけなかった。

知らないでしょ?
施設の人や警察の人が、私を預かろうとしていたこと。

彼らに見せ付けなきゃいけなかった。
じゃなきゃ、私は自由を奪われるから。


一人で生きなきゃ、迷惑かけないようにしなきゃ、

そう意気込む度に怖くなる。
辛くなった。

気持ちばかり焦って、心も体も着いていかなくなった。




そんな時、私、学校帰りに襲われたの。
昔いつも遊んでたあの公園で。
口に何か詰められて…そのまま。

気が付けば全裸で傷だらけ。

残ってた僅かな気力で家に帰ったけど、苦しかった。

泣き付きたかった。


オバサンにこれ以上の迷惑はかけられない。
だから、他の人を探したの。

誰でもよかった。
心を癒してくれるなら。

偽りの愛でよかった。
家族を失い、人を遠ざけ、体を貪られた私でも、まだ愛されることができると、判ったから。




沢山の人に、愛されたかったから。」


涙は、どうして流れるのだろう。
温もりをもって、こんなに溢れるものだろうか。


偽りを求めた私は間違っていないよ。
だって、偽りすら無かったら

私は私でいられなかったハズだから。





< 29 / 41 >

この作品をシェア

pagetop