偽善愛で夢を見て。


頭を小突かれた。

それから、熱い抱擁を。


馬鹿野郎、と呟かれた。

その声は私が初めて聞く、紅の泣き声だった。
肩に、何かが落ちてきて染みる。

涙だと、気付く。








彼は今、何を思って泣いているのだろうか。




「お前、絶対死ぬなよ。

死んだら、お前追い掛けて生き返らせてやる。

絶対生き返らせてやる。

逃がさねぇ。

お前傷付けた奴捜し出して殺してやるよ。
それでお前の気が晴れるなら、そうしてやるよ。

俺らはお前の味方だろ。
何で頼らねぇんだよ。

迷惑とか思ってねぇんだよ。
馬鹿じゃねぇのか、お前。


寄りかかって来いよ。
受け止めてやるよ。
お前が抱えてるもん、肩代わりしてやるよ。


頼れよ。」






紅は、やっぱり泣いていた。



私の分まで泣いてくれた。

心残りはもう、無い。







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