裏面ワールドトリップ
――やっぱり凄い人なんだな、ローゼさん。



同じ30歳で訪れた「人生の転機」だと言うのに、彼女の場合はこんなに華々しく

それに比べて私は……。



「真琴さんも、今30歳だったわね」


「え?えぇ……」


「いいわねぇ」


彼女は目を細めて、私の顔を見つめた。



ちっとも良くない。


異世界の優秀な魔法使いと違って、現代の日本に生きる何の取り柄も無い女にとっては

仕事や恋愛や、その他ありとあらゆる物事に勝手に限界を定められ、制約が課せられ、どんどん身動きが取れなくなっていく年齢

それが30歳だ。


たとえマッサージでお肌のエイジングサインを消してもらっても、実際の年齢の前では、そんな事には何の意味も無い。



「元の世界に帰ったら、また色々大変でしょうけど」


ローゼさんは私の胸の内を否定するかのように、静かに首を振った。


「真琴さんはどっちに転んでも、必ず幸せになるわ。

私が保証する。

貴女は綺麗なだけじゃなく、賢いし、優しいし、それにとても強いから」


「……そうですか?」


「えぇ。


いい事を教えてあげる。

30歳って言うのはね、若い子とおばさんの『いいとこ取り』なの。

若い頃より経験を積んで知恵も付いて、おばさんより体力があるでしょ」



彼女の言葉を、気休めやお世辞として片付ける事は出来なかったし

そんな事はしたくもなかった。


まさに、私にとっての『啓示』だと思った。



「とても貴重で素晴らしい時期よ。

大事に過ごしなさい」


「はい」
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