不完全な完全犯罪・霊感探偵瑞穂誕生【完全版】
 それなのに、次に届いたメールには……


――岩城みずほが学校の屋上から飛び降り自殺したらしいよ――
だって。


見た途端。
稲妻に撃たれたように、立ち上がれなくなった。

余りにも衝撃的過ぎて、暫く動き出せなかった。


それでも
重い足を引きずって、やっとペダルに乗せた。


みずほの元へ……

行きたいのに……

気持ちだけ焦って……

気持ちだけ焦って、上手く自転車を漕げないんだ。
みずほが待っていると言うのに。




 (―一体何のための自殺?)

突然疑問が渦巻く。


(――背景も、動機も見えて来ない!

――第一。
『助けてー!!』
って叫んで……
何が自殺だ!)


俺はメールが誰から来たのか気になった。


体はみずほの居る校庭を目指したがっている。


それでも……

もう一度自転車を止める。

震える手で携帯を開けて、メールの相手を確認しようとする。


でも……
メルアドは数字と記号の羅列だけだった。




 俺とあいつはさっき教室でキスをしたばかりだ。

勿論誰も居ないことを確認して……

そうじゃないと俺……

恥ずかしいよ。


でもみずほは、何処でもキスしたがる。

本当は嬉しいくせに……

俺……

人目ばかり気にしてた。


だから今日だって……


ライバル達に出遅れることは解っていた。

それでも俺はキスが出来るタイミングを狙った。

愛しているみずほに、行って来るよって言うために。




 『試合頑張ってね』
みずほはそう言いながら、ありったけのラブをチューニューしてくれた。


何時もより激しいキスに戸惑った。
俺と離れたくなかったのだろうか?
そのままずっと見つめるみずほ。


でも俺は試合を選んだ。


出発する前に、みずほがもう一度キスをせがんだ。

それなのに、俺は周りを気にしてた。

俺だってしたいよ。
脳天までカーッと熱くなるような濃厚なキスが。

でも大事な試合が俺を待っているんだ。


どうしてもレギュラーになって、エースになって、みずほに相応しい男になろうと思っていたんだ。


だってみずほは学年きっての優等生で、誰もが羨む秀才だったんだ。


でも俺は……
スポーツしか能のない落ちこぼれ。

そう、雲泥の差。
みんなに不釣り合いだと馬鹿にされていた。




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