不完全な完全犯罪・霊感探偵瑞穂誕生【完全版】
対峙
 俺が屋上で行ったみずほの慰霊祭。

その内容を知らない二人は、又キューピット様をやろうと言い出した。


(――でも本当は知らないはずはないよな。

――そうでないと、先生のポケットにみずほの携帯を隠したことの意味がないよ。

――そうだよ……
何かを遣ると言うことには気付いていたはずだ)


俺はもし又キューピッド様を遣るように言われたら、積極的に参加してほしいとあの時俯いた女生徒達に呼び掛けていた。

勿論、みずほの自殺に見せかけた事件のことは何も知らせるないでほしいと念を押して……


みずほのような犠牲者が出ると、彼女達は最初は渋っていた。

でも理解はしてくれたようだった。


俺には言えない、あの二人が誰を殺したがっているのかなんて。


其処に書かれた名前の人が、今度の犠牲者になるかも知れないなんて。


だから、犠牲者となるかも知れない人を救い、事件を未然に防ぐためにも俺は立ち上がるんだ。

みずほのような犠牲者はもう出したくないからだ。




 そして……
その結果出た答えは
《まつおゆみ》
だった。


かねてよりの計画通り担任には、見渡せる場所にいて松尾有美を守ることを頼んでいた。


勿論先生は渋った。
教え子を疑うことに難色を示した。


そこで俺は、録音した二人の声を聴かせた。

先生の顔が、見る見る変わる。

俺や有美同様、相当ショックを受けたようだった。


そして頷き、そのまま屋上へと向かった。


みずほの堕ちた柵から見えない屋上の階段へと続くドアの横。

二人で充分検証した結果、此処が最適だということになった。


屋上へと上がる階段。

外へ出るドア。

階段とステップを囲むコンクリートの壁。

その横に階段と言うか、鉄製のハシゴが付いていた。





 万が一のためだった。
俺は……
勿論先生だって……
二人が犯人とは思いたくなかったのだ。


何かの間違いだと思いたかった。

でもそれは現実だった。

前々からエースに恋い焦がれている女生徒達に、二人は着々と松尾有美の自殺説を広めていたのだった。


一方俺は、松尾有美を説得しようとしていた。


でも有美は首を縦には振らなかった。


(――そりゃそうだ……

――殺されるかも知れないんだ。

――例え先生が傍で片時も目を離さずに見守ってくれると解っていても……)




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