不完全な完全犯罪・霊感探偵瑞穂誕生【完全版】
 その翌日。
屋上に松尾有美は呼び出されていた。

覚悟を決めたからではなかった。

半ば強引に、連れ出されたのだった。


実は俺は有美の説得に失敗し、諦めるしかなかったのだった。
だから、何も知らなかったのだ。




 百合子と千穂は、始めた三連続死のゲームを完成させようと躍起になっていた。


俺がその事実を知ったのは、有美が連れ出された後だった。


絶対に有美を守り抜くことをみずほに誓って、俺は職員室に急いだ。

でも担任は何処にも居なかった。




 トイレ、校庭。
思い付く場所は全部あたった。

それでも見つけ出せなかった。


(――先生まで俺を見捨てたのかい?

――ヤバい!
有美まて墜とされる!!

――どうしよう?
どうしよう!!

――有美が墜ちたら俺……

――先生何遣ってるんだ!!

――みずほに何て言えばいいんだ。

――結局……
有美はお荷物だってことか!?

――有美の親父さんが死んだら、先生と恋人は……

――そうだよな!?

――結局有美は居ない方が上手くいくからな……)


思考回路は絶不調。
俺は途方に暮れながら、仕方なく一人で屋上へ向かった。




 俺は約束通り、屋上に続く扉の前に張り付いた。

聞き耳をたて、神経を研ぎ澄まさせた。


「昨日キューピット様を遣ったら、アンタが死ぬと出たの。だからアンタは死ななきゃいけない」


鏡面回顧で見たシーンが繰り返されている。

俺はみずほのコンパクトを、ポケットの中で再び握り締めた。


コンパクトに俺の気持ちが通じたのだろう。
熱を帯びていた。


みずほの愛を感じた。

俺が守れなかったみずほが、俺を守ろうとしていた。


ドアの死角となる部分で俺は成り行きを見守った。

俺に出来る事はそれ位しかなかったのだった。




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