TABOO~それぞれの秘密~

夜行バスから降り立つと。

何年ぶりかの風景に後悔と焦燥しか感じられなかった。

未だ居座る想いが蘇って身震いすら感じる。

「約束通り帰ってきたな」

バスが走り去って聞こえた声に、唇を噛みしめ顔を上げた。

「相変わらず、いいオンナだな」

「そっちこそ、私好みのオトコのままだね」

掠れた声しか出ないのは、一晩を乾燥したバスで過ごしたせいだと、言い訳を口にする間もなく。

目の前の男は眉を寄せて。

「その低い声、何人の男がベッドで聞いた?ん?」

隠す事ない苦しげな声。
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