後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「それじゃ、そういうことですから。さ、お姉さま! 行きましょう! では、お坊ちゃま方さようなら」

 まだ首を捻っているイヴェリンの腕を引くようにしてアイラは歩き始めた。

「お坊ちゃま方って俺たちのことか?」

 呆然としてライナスはつぶやく。彼らは身分を偽るような真似は思いつかなかったから、確かに貴族のお坊ちゃんズという認識で正しかったのだが。

「しかしだな、エリーシャ様の護衛はどうするんだ……」

 遅れてしまった分を取り戻そうと急ぎ足に歩きながらイヴェリンはつぶやいた。

「皇女宮にいらっしゃるのなら、問題ないでしょう。外出禁止になっているはずですしね」

 皇女宮に残ったエリーシャは、近頃の心労がたたって寝込んでいることになっている。いつもの思いつきで後宮を出ない限り、厳重に守られた場所にいるわけだから安全だろう。

「ジェンセン・ヨークはどうしている?」
「あー、基本的には皇女宮の中の図書室ですねぇ。こちらからの呼びかけには応じてくれますが、よっぽどの緊急事態じゃないなら連絡するな、と」
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