後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「彼女にもいろいろやってもらうことがあるのよ、ダーシー」

 髪を結い直し、青に近い水色から、ごく薄い水色まで三色の水色を使い分けたドレスに着替えたエリーシャはダーシーを手招きした。

「まずはお茶をいただきましょう」

 ファナが無言のまま立ち働いて、お茶のテーブルを調えていく。アイラはワゴンから大量の菓子を取り出してファナの指示に従ってテーブルに置いていった。

「……これはまた、大量ですな。エリーシャ様」

 ダーシーの顔がひきつっている。

「今日は昼食を食べそびれたのよ。その分もかねているの」

 エリーシャはしれっとした顔で嘘を吐く。アイラはとっさに俯いて表情を隠した。昼食を食べそびれたなんて嘘だ。しっかり二人前食べていたのを侍女たちは知っている。
 
 皇女様が大食いだなんて知られたら、いろいろと外聞がよろしくないであろうことはわかっているので誰も口を挟もうとはしなかったが。

 昼食兼である、との言葉通り菓子だけではなく食事用のパンにチーズやハムといったものも用意されていて、エリーシャはそちらに手を出すつもりらしい。
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