ティーチ?
「──え?」



俺が出した熱々の紅茶にふぅふぅ息を吹きかけていた篠岡さんが、きょとんとまばたきをして俺を見つめた。

さっきまでのやたら真剣な表情とのギャップが可笑しくて、思わず苦笑しながら俺はまた口を開く。



「だからね、鎌田は今、彼女いないんだって。よかったね」

「え、えっ?! 先生、どうしてそれ……っ」

「今日、休み時間たまたま会ったから本人に聞いた」



だから確実な情報だよ、と念を押すように付け加えると、俺はコーヒーを一口飲む。

彼女はこの味が苦手というから偶然あった紅茶を出したけど、俺にしてみれば食事以外の飲み物は、コーヒー以外ありえない。しかもブラック。


と、そこで篠岡さんの反応がやけに薄いことに気がついて、コト、と小さな音をたてながらマグカップを机に置く。



「どうしたの、篠岡さん。うれしくない?」

「えっ? あ、いやそうじゃなくて……」



首をかしげつつ訊ねた俺に、呆けていたらしい彼女はハッとしたようにこちらを向いて。

それから今度は、視線を落として自分の上履きのつま先を見つめている。
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