リコリス



バスで帰ると言っても
バス停までは徒歩だ。


「…よしっ!」


意を決して
あたしは大雨の中に飛び込んだ。



…はずだったのだけれど


「おいっ!」

「ほぇ?」

いきなりの事に
思わず変な声がでてしまった。


っていうか
誰かに腕掴まれた??


誰だろうと思い
後ろを振り返ると
そこには見覚えのない
男子が立っていた。

赤いスリッパだから
同級生であることは確かだけど
こんな奴見た事ない。


「大丈夫か?」

「へ?」

「こんな大雨の中
 飛び出して行ったら風邪ひくぞ?」


そう言うと、
彼は手に持っていた傘を差し出した。


「これ使え。
 俺はもう一本あるから。」


傘二本常備してるって
どんな偶然だよっ!!


と心の中で突っ込みながらも
ここはありがたく
使わせてもらうことにした。


「ありがっ…」

「タダとは言ってねーぞ?」


…は?


「なにかお礼してくれんなら
 貸してやってもいいけど??」


なにこいつ、ムカつくー!!


とは言っても
がっしりと傘を掴んだ手を引っ込めて「やっぱりいいです」なんて訳にもいかず


「…わかった。」

「んじゃ、楽しみにしてるわ」


そう言うと
名前も知らない彼は
大雨の中を濡れながら走って行った。


はぁ…
なんか変な奴に捕まったなぁ。


…ん?
ていうかあいつ
傘持ってるって言ってなかったっけ?


なんで傘ささずに帰ったんだろ??


少し不思議に思ったが、
考えていても仕方がないので
とりあえず帰ることにした。

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