君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】


「前からずっと思ってた。

 十夜と憲が加入してから、ファンのマナーが悪くなって
 俺たちは、LIVEハウスから締め出された。

 もうこのメンバーでやるのは、潮時だと思ってる。

 後、俺のところにとある事務所から、デピューしないかって打診があったんだ。
 だけどその契約には、ボーカルとドラムの交代が前程らしい。

 出会ったときは、いい声だって思ったけど……
 一緒にやってわかったのは、十夜の声も憲のドラムも俺の曲には
 似合わないってことなんだよな。

 ファンの子にちやほやされて、楽しそうにやってるかも知んないけど
 俺たちは遊びでやってるわけじゃない。

 十夜には俺の曲は歌いこなせないよ」



涼しい顔して、伊達眼鏡を押し上げながら告げる八代の頬を
気が付いた時には、俺は思いっきり、グーでぶん殴ってた。


殴った勢いで壁に打ち付けらて倒れた八代は、
そのまま立ち上がって、俺に今度は殴り掛かってくる。


乱闘が始まった直後、無言だった尊夜はただ
ドアを片手でバンっとぶん叩いた。


ピタリと騒動が止まった瞬間、


「オレ、脱退しますよ。
 オレも……何時までも遊び続けられる身分じゃないんで。

 お世話になりました」


っと一礼して、そのままスタジオから出ていく。


俺に来いとも、辞めろともアイツは一言も言わない。


ただ黙って出ていったアイツを追いかけるように、

「脱退する」

一言だけ告げて、ドアを蹴って走りだす。



地下から地上へと階段を登っても、
尊夜の姿は何処にもなかった。



周辺を走りながら、尊夜を探すもののアイツは見つけられなくて、
俺はpriere de l'ange(プリエールデランジュ)へと足を向けた。


尊夜と俺を繋ぐ場所。
priere de l'ange(プリエールデランジュ)。



「茂さん、綾子(りょうこ)さん、志穏来てますか?」

「あら、紀天じゃないか?
 志隠はまだ来てないなぁ。なんかあったのかい?」



priere de l'ange(プリエールデランジュ)で、
志穏のおばあさんである怜皇さんの実母、綾子さんのパートナーである
茂さんが迎えてくれる。



「紀天、志穏に何かあったのかい?」

「あっ、たった今……俺たちが暫くやってきた、バンド抜けてきたんで」

「あぁ……。

 そう言うことなら、志穏を今はそっとしておやり。
 あの子には、そういう時に絶対に出掛けるところがあるからね。

 怜皇の耳にも入れておくよ」

「志穏のこと……お願いします」


一礼して、そのまま店を飛び出すと
まだ胸の中のモヤモヤが残りきらない心を何かに八つ当たりするように
そのまま近くのスポーツセンターに立ち寄って、
思いっきり体を動かすと、そのまま自宅まで帰った。

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