さよならの魔法



お願い、神様。

この際、神様でも仏様でも、何でもいい。


私の願いを叶えてくれるなら、どんな存在にだって祈るから。



お願いします。


どうか、私と紺野くんを同じクラスにして下さい。



今回のクラス替えで同じクラスになれれば、自動的に来年も同じクラスということになる。

2年分の運命が、今日、決まる。


そう思えば、気合いだって入る。

むしろ、去年よりも意気込みは上なのかもしれない。



好きな人と同じクラスになりたい。


それは、誰でも願うこと。

恋をしている女の子なら、誰しも1度は願うであろうこと。



(もう一眠り、しようかな………。)


心に思うことがあるせいだろうか。

いつもよりも早い、目覚めの時間。


起きて支度をするには、まだまだ早い。



もう1度ぼんやりと外を眺めてから、再び布団の中へと潜り込む。

そうすれば、自然と眠気が襲ってくるから不思議だ。


包み込む様な優しい眠気に誘われて、眠りの世界へ飛び立とうとする。



願わくば、次に見る夢は、別の夢であります様に。


もう、あの頃の夢は見たくない。

苦しむだけしか出来なかったあの頃の夢は、思い出すだけで息が止まりそうになるから。



いじめられていた、2年前。


誰も助けてくれない。

みんな見ているのに、知らないフリをされる。


救い様のないあの頃のことを夢にまで見るなんて、気分が悪い。



悪夢。

これは悪い夢でしかないのだと、そう思いたい。


眠りにつこうとしたその時、私の耳に誰かの声が届いた気がした。








「もう………んに………てよ!」


虚ろな意識が、強制的に引き上げられていく。

ゆるりゆるりと、夢の中から連れ出される。


これは、夢だろうか。

また悪い夢でも見ているのだろうか。



もう、あんな夢は見たくないのに。

救われない夢なんて、ごめんなのに。



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