さよならの魔法



紺野くんは覚えてくれていた。

私の悲しい決意が詰まったチョコレートを受け取ってくれて、しかもちゃんと口にしてくれていたのだ。


なんて、律儀な人だろう。

なんて、誠実な人なんだろう。



それだけで、涙が出るくらいに嬉しかったんだ。

私は。


例え、紺野くんが、私ではない女の子を見ていたとしても。

初めての恋が報われなくても、受け取ってもらえたというだけで、私の恋は救われたのかもしれない。



紺野くんに、やっと伝えられた。

あの頃抱いていた気持ちを、ようやく自分の口から伝えることが出来た。


紺野くんのありがとうという言葉が、私の恋を解放してくれたんだよ。




会えて良かった。


ずっと、会いたかった人。

ずっと会いたくて、だけど、会えなかった人。



とてもとても、好きな人。

大好きな紺野くん。


あなたと、再び出会えて良かった。



しかし、私と彼に、次に会える時なんて来ないだろう。

私が、紺野くんの顔を見ることはもうないのだ。


遠く離れた街に住む私達には、あの頃の様な薄い繋がりですらないのだから。










駅に着いて、私を出迎えてくれたのは、千夏ちゃんと千佳ちゃんだった。


2人は帰る日しか伝えていなかったはずなのに、当たり前の様に2人はそこにいてくれた。

私を、笑顔で出迎えてくれたんだ。



「ハル!」


2人の声が重なって、私の名前を呼ぶ。

名前を呼ばれた直後、私の視界は闇に閉ざされてしまった。


感じる温もりと、流れ込む優しい感情。

ギュッと思いきり抱き付かれて、反動でよろける体。



「会いたかったよー、ハルー!」

「………どうして?」


ふと口にした疑問は、千夏ちゃんが答えてくれた。



「どうしてって、当然でしょ!」

「そうそう!」

「私と千佳が、ハルのことを送り出したんだもん。出迎えるのも私達じゃなきゃ、おかしくない!?」

「ち………なつ………ちゃん………」



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