さよならの魔法



臆病で、後ろばかりを見ていた私。

変わった気になって、だけど、内面は何1つ変われずにいた私。


そんな私の背中を押してくれたのは、この2人だった。

逃げ出したかったのにあの場に留まれたのは、千夏ちゃんと千佳ちゃんの存在があったからだ。



私の居場所はここだと、2人は私に教えてくれた。

私のことを待っていてくれると、そう言ってくれた。


その言葉に、何度励まされたことだろう。

その存在に、何度救われたことだろう。




「ハル、おかえりー!!待ってたよ。」

「もー、ハルがいない間、すごいつまんなかったんだから!」


温かな腕の中で、2人の言葉を聞く。



おかえり。


その言葉が嬉しかった。

待っていてくれたという事実が、とても嬉しかった。



この街に来るまで、私は孤独な人間だった。


友達もいない。

心の拠り所になっていた恋だって、上手くいかない。


母親にも見放され、唯一、傍にいてくれるのは父親だけだったのだ。



お父さんのことは好き。

だけど、それだけでは寂しかった。


誰にも、必要とされない。

誰も、傍にいてくれない。

誰のことも信じられない。


お父さん以外、誰も。

孤独だった私を変えてくれたのは、魔法の言葉なんかじゃない。



私を変えてくれたのは、間違いなくこの2人。


知らない人ばかりの場所で、私に声をかけてくれた。

私のことを信じて、隣にいてくれた。


そして、私を引き取って育ててくれたお父さん。



私は3人に支えられて、今、ここにいる。

ここに立っていられるんだ。



「ただいま!」


私、帰ってきたよ。

ちゃんと、みんなのところに帰ってきたよ。


私の生きるべき場所は、ここ。

私の居場所は、ここなんだ。




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