~宿命~
第12章 もう一度はない
俺が無言で安居の手を見つめていると、微かに指が動いた。
明隆:「おばさん。今、手が動いたので話しかけてみて下さい。」
安居の母:「朋香?聞こえる?」
安居のお母さんの声で安居が目を覚ました。
安居:「…お母さん?」
安居の母:「朋香!良かった~!」
明隆:「良かったですね。おばさん。」
安居:「あなたは誰?」
俺には安居の言葉が重く感じた。
明隆:「俺は倒れとるキミを連れてきた者やで。」
安居:「そうなんだ。ありがとう。」
安居の一言一言が俺の心を崩していく。
安居の母:「私、ちょっと飲み物買ってくるわね。」
俺に気を使ってくれ、二人っきりにしてくれた。
明隆:「あのさ、そのままでええから聞いてくれる?」
安居:「何?」
あの時、俺は何も言わず、立ち去れば良かったと後悔している。
安居があんな表情をするなど思ってもいなかった。
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