~宿命~
安居:「お母さん。さっきの人の手懐かしかった。」
安居の母:「そう。お父さんに似ていたからかしら。」
安居:「違う…なんか…大事な事を忘れてる気がした。」
安居の母:「朋香はそれを思い出したいの?」
安居:「うん。もう一度会って確かめたい。」
俺には十分伝わった。
それだけで満足だった。
思い出させて忘れていた自分を悔(く)いられるくらいなら思い出されない方がいい。

トボトボと歩き、階段を下っていると《ガラガラガラ》と安居の病室が開く音がした。
だか、振り向く事はなかった。
もう、安居が知っている俺は涙と一緒に流れ落ち、復讐に燃える鬼神と化していたから。
< 73 / 200 >

この作品をシェア

pagetop