放課後ラプソディ
 どこまで聞いていいんだろう。

 友達とはいえ。

「あの……、六坂、なんていうか、おこがましいって言うのかな? 嫌だったらいいんだけど、私、いっしょに行こうか?」

 霧恵、けっこう勇気あるな。

「病院、どこかわかる? ほんと、なにもできないけど、ちょっと話し相手ぐらいにはなれるし」

「……」

 六坂は返事をしない。動揺しすぎて、霧恵の声も届いてない?

 あたしも不安になってきた。六坂が黙っているのが、なんだか、それだけで気になってしまう。

 男の子は、弱いところを見せないんだよね。六坂だって、そうなんでしょ。

「とりあえず……。病院、は、わかるよ。どっかの大学病院。行ったことねーし」

 そう言って、六坂は、ちょっと笑おうとしたのか、苦笑いになった。顔の筋肉が微妙に引きつっていた。

 なんでこんなときに笑おうとするのよ。笑えないじゃない。笑わなくたっていいじゃない。無理しなくていいよ。

 あたしは、霧恵と六坂の会話に入るタイミングを逃し、ふと、教室にいるのがあたしたちだけではなく、芹沢もいると気がついた。芹沢、存在感ないな。

 なにがあったんだ、そんな顔で六坂を見ていた。
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