偽りの婚約者


このあと、玲奈の友達が俺の事をずっと想っていたと聞き驚いた。
玲奈の友達には悪いが……。
同じ経理課にいたのにもかかわらず玲奈と一緒にいた彼女の顔は良く覚えてなかった。




「俺は彼女と組んでお前と安西さんを引きはなそうとしたんだ」



「千夏の事は本気で好きなんですか?」


「それに答えたら安西さんを譲ってくれるのか?」



「千夏は俺の女です。先輩にも誰にも渡しません」



「……だろうな」



見覚えのない、あの腕時計がなぜここにあったのか先輩の話しを聞いてやっと分かった。
玲奈の友達が千夏を引き止めている内に先輩がここに
置いて行ったということだった。



さっき千夏が来る前に先輩は美味しいお酒が手に入ったから、と持って来てくれた。
次いでにトイレに寄りたいといって中に入った後、俺の目を盗んで置いて行ったようだ。
千夏の姉に送った手紙も先輩達がした事だった。



「東條、悪かった。
中島さんの事も許してやってくれないか。彼女もお前への想いを忘れられなくて苦しかったんだと思うんだ」


「それは……千夏次第です。
俺は先輩達を責められない。復讐の為に千夏や千夏の両親を騙していたんだから」



「安西さんと話しをさせてくれないか?」


先輩を千夏のいる部屋に通した。



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