偽りの婚約者




東條さんは、客をリビングに通したらしい。



壁を挟んで隣の部屋にいる私は一人取り残されたような孤独感を感じて目を閉じた。




疲れた……。
あれだけ感情的になって人の事を責めたのは始めてかもしれない。
信じていたのに裏切られたって思って凄くショックだったから腕時計を見つけた時は頭の中が真っ白になって東條さんに感情をぶつけて責めてしまった。




膝を抱えて顔を伏せる。


しばらく、そうしていたら段々と落ち着いてきた。



東條さんは紗季さんとの事を否定していた。
一方的に責めないで話しを聞けば良かったのかもしれない。
でも、証拠の腕時計は出て来た。
もう誰を信じていいのか分からない。



そんな事を考えていたら突然部屋のドアが開いた。

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