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 鈴音は文庫本を開いた。読みかけの本だ。しおりを挟み、抜き取り、読み始める。最初の一文はこうだ。
『夢で会おう』
 難病を患い病床にふける彼氏が死に際に、彼女に言うセリフ。よくある話しであり、それでも人は感動する。夢、という単語は、睡眠時に用いられたり、人生の目標やそれに向かう衝動に用いられる。
 では、この文庫本の一文はどちらに属するのだろう。
 そんなことを考えた彼女は恭一の喉仏がごくりと唾を飲み込む動作に入ったのを感じた。そして、
「夢で会おう」
 恭一はまたしても意味のわからないことを放ち、文庫本と同じセリフを放った。でも、記憶の底流から湧き出る源泉は、鈴音に気づきを与えた。ああ、このセリフに遭遇するのは三度目、か。
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